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この冬、親子で読みたい!「信頼関係」に気づく絵本7選

子どもがのびのびと成長していくために大切なことのひとつが、周囲の大人や友だちとの信頼関係。自分の気持ちを伝えたり、相手の話を聞いたり、力を合わせて何かに取り組んだりする力の土台となります。お金との付き合いを考えるうえでも、信頼関係はとても大切。そこで今回は、子どもといっしょに読める信頼関係について問う絵本をご紹介します。

おまえうまそうだな 作・絵:宮西 達也 (ポプラ社)

肉食恐竜のティラノサウルスが草食恐竜のアンキロサウルスの赤ちゃんを見つけて、「おまえうまそうだな」とよだれをたらり。ところが赤ちゃんはティラノサウルスを、自分に「ウマソウ」という名前をつけてくれたお父さんだと思い込んでしまいます。「ぼくもお父さんのようになりたい」と慕われて、ティラノサウルスはウマソウを守り、生きるすべを教えるようになるのですが…。

ティラノサウルスを心から信頼しているウマソウと、ウマソウを食べるつもりだったのに、いつの間にか信頼に応えて、守り育ててしまうティラノサウルスの不思議な関係を描いた絵本。信頼する側(ウマソウ)が、信頼される側(ティラノサウルス)に大きな影響を与えています。鳥のヒナは最初に目にした相手を親と思い込んで、後をついて行くといいますが、子どもはみんな信頼という大きな力をもって生まれてくるのかもしれません。

ともだちや 作:内田 麟太郎: 絵:降矢 なな (偕成社)

キツネが「ともだちやです、ともだち1時間100円です」と歩いていると、オオカミに呼び止められてトランプの相手をすることに。キツネがお代を求めると、オオカミは「ともだちからお金をとるのか、それが本当のともだちか」と目をとがらせます。そういえばオオカミは「ともだちや」ではなくて、「おいキツネ」と呼んだのでした。

森一番のさびしんぼうだったキツネが、「ともだちや」というおかしな思いつきをきっかけに、オオカミと本当の友だちになります。「1時間100円です」とお金をとるのは極端ですが、寂しさから本当の友だちではない「ともだちや」になってしまうことって、意外とあるのではないでしょうか。本当の友だちとはつまりどういう関係かということに、やさしく気づかせてくれる1冊です。

しょうじき50円ぶん 作:くすのき しげのり 絵:長野 ヒデ子(廣済堂あかつき)

ある日、ぼくと弟がお小遣いでジュースを買ったら、おつりが50円足りません。「あーっ、たいへんや!」急いで戻ると、お店の人は頭を下げながら50円を渡してくれました。別の日、たこ焼きを買ったら今度は、おつりが50円多かったのです。さあ、どうしよう…?

「たこ焼き350万円」「おつりは150億円」とノリノリだったたこ焼き屋さんが、きょうだいが返した50円に感動して、頭からハチマキを外して両手で受け取る姿が印象的です。しょうじき50円分は、きょうだいにとってもたこ焼き屋さんにとっても、計りしれない価値となりました。テンポのいい関西言葉で、お金について考えるうえで大切な信頼関係について、重たくならずに教えてくれます。

こんとあき 作:林 明子 (福音館書店)

女の子の「あき」とキツネのぬいぐるみの「こん」は、生まれた時からずっと一緒。でも、あきが大きくなるにつれて、こんはだんだんと古くなって、とうとう腕がほころびてしまいます。そこで遠くに住むおばあちゃんに直してもらうために、ふたりは電車に乗って旅に出ます。「大丈夫、大丈夫」とあきを励まして、旅をリードするこんですが…。

旅の終盤にこんがピンチに陥ると、あきはしっかりと行動力を発揮して、こんを助けます。あきが信頼しているからこんは頑張れるし、こんが側にいてくれるからあきは強くなれるのかもしれません。信頼関係がこんなふうに子どもを支え、成長させてくれるのだということが、よくわかる1冊です。

ふたりは ともだち 作:アーノルド・ローベル 訳:三木 卓(文化出版局)

かえるくんと、ともだちのがまがえるくんの何気ない日常を、春から夏への季節の移り変わりとともに丁寧に描いた物語。「だれからも手紙をもらったことがない」と悲しそうにしているがまがえるくんを見て、かえるくんが急いでうちへ帰って、がまがえるくんに手紙を書くという、ラストのエピソードには思わず胸がジーンとします。

さかのぼって、物語のはじまりは春。かえるくんは美しい季節を一緒に楽しもうと、眠っているがまがえるくんをちょっと強引に起こします。夏には、がまがえるくんの水着姿が変だと笑ったりします。かえるくんは完ぺきじゃないけれど、ふたりの間の友情は本物なのです。誰もが完ぺきではありませんが、そのままで誰かの大切な存在だと気づかせてくれます。

二番目の悪者 作:林 木林 絵:庄野 ナホコ (小さい書房)

王様になりたい金色のライオン。ライバルは街の者たちが「やさしくて強い」と頼りにしている銀色のライオンです。金色のライオンは街で、「銀色のライオンは乱暴もの」「用心して」と言いふらします。最初は誰も信じなかったのに、やがて噂が広まっていき…。
自分勝手な金色のライオンが、銀色のライオンをおさえて王様になると、やがて国は荒れ果ててしまいます。

「本当に、金のライオンだけが悪かったのか……?」絵本は呼びかけます。誰かにとって都合のよい嘘を確かめもせずに信じて、世界を変えてしまう二番目の悪者にならないでと。 SNSがとても身近になった今、このお話と同じできごとは現実の世界でも、子どもたちの間でも起きています。

ぼくの ともだち おつきさま 作:アンドレ・ダーハン 文:きたやま ようこ (講談社)

「気がつくと、きみがいた」ぼくとお月さまが出会って、はじまった素晴らしいとき。黙っていても楽しくて、一緒にいるだけでうれしくて…。美しい絵と詩のような文が組み合わさって、まるでやさしい音楽を聴いているように、心にしみこんでくる絵本です。

お月さまとの蜜月を過ごしたぼく。絵本の最後に太陽と出会って、月と太陽とぼくとで、また楽しいときのはじまりです。信頼関係という土台があると、きっとこんな風に新しい出会いがあったときに、すっと関係を築いていけるのでしょう。相手の自分とは違う部分も認めあって、支えあっていけるのではないでしょうか。

身近な絵本からいっしょに学ぼう!

これから子どもが踏み出していく世界で、出会う人たちとよい関係を築いていけますように。今回ご紹介した絵本を寒い日にお家でゆっくり、お子さまといっしょに楽しんでみてはいかがでしょうか。

執筆:ライター/山見美穂子

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