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GIGAスクール構想で何が変わる?教育×ITで変わること

政府によって「GIGAスクール構想」が推進されており、従来までのアナログ教育から、デジタル機器を活用したICT教育へと変化しています。
本記事では、「GIGAスクール構想についてよく知らない」「何が変わるのか知りたい」という方に向けて、GIGAスクール構想の概要や推進される背景、現状について解説します。ICT教育について理解を深め、必要があれば家庭でも取り入れていきましょう。

GIGAスクール構想とは

GIGAスクール構想とは、すべての児童生徒にPCやタブレット端末を配備し、ICTを活用した教育の実現を目的とした計画のことです。2019年12月に文部科学省が発表した構想で、すべての子どもたちに個別最適化された教育ICT環境の実現を目的としています。

教育ICT環境の整備によって、学習や校務の効率化、教育の質の向上などが期待できます。児童生徒のICTリテラシーの向上にもつながるため、複雑化する情報社会に対応する能力を備えられるのもメリットといえるでしょう。

GIGAスクール構想が推進される背景

GIGAスクール構想が推進される背景として、日本のICT環境の整備が各国と比較して遅れていることなどが挙げられます。GIGAスクール構想が発表された当時、日本ではICT環境の整備が十分に進んでおらず、早急な対応が求められていました。

学校のICT環境整備状況は地域格差が大きい

文部科学省の調査(2019年3月時点のデータ)を参照すると、学校のICT環境整備状況は、地域格差が大きいことが分かります。

都道府県別 学校における主なICT環境の整備状況

引用:文部科学省「平成30年度学校における教育の情報化の実態等に関する調査結果(概要)(平成31年3月現在)

整備状況の格差是正のため、文部科学省は「学習者用コンピュータを3クラスに1クラス分程度整備」という目標を掲げました。

日本のICT環境整備が各国と比較して遅れている

2018年に行った文部科学省の調査によると、日本の学校の授業におけるデジタル機器の使用時間は、OECD加盟国(38ヵ国)の中で最下位となっています授業でデジタル機器を「利用しない」と答えた生徒の割合は約80%に上り、日本のICT環境整備の遅れが顕著に表れました。

参照:文部科学省・国立教育政策研究所「OECD生徒の学習到達度調査(PISA2018)

デジタル機器は学校外での使用頻度は高い比重にある

学校の授業におけるデジタル機器の使用時間が短いのに対し、学校外での使用頻度は高い比重にあります。各国と比較して、インターネット上のチャットやオンラインゲームに費やす時間が多く、かつ増加傾向が著しいことが分かりました。また、コンピュータを利用して宿題をする頻度がOECD加盟国の中で最下位となり、教育ICT環境の整備が急務となったことが背景にあります。

GIGAスクール構想の推進によって変わる各教科の教育方針

GIGAスクール構想の推進によって、各教科の教育方針は大きく変わります。文部科学省の資料を基に、ICTの整備で各教科の授業がどのように変わるのか見ていきましょう。

国語

これまでの国語の授業では、ノートや原稿用紙などに文章を書くことが基本でした。しかし、ICT環境が整備されることで、「文書作成ソフト」を利用して文章を作成するようになります。

文書作成ソフトを利用すれば、校閲機能によって簡単に文章を推敲することができます。また、作成したデータを教員や児童生徒と共有すれば、コメント機能を用いて助言し合うことも可能です。

算数・数学

算数や数学の授業では、表やグラフ、図形などを簡単に作成できるようになります。そのため、ノートやプリントなどに書かれた平面上の関数や図形などとは異なり、動的に変化させて特徴を考察することが可能となります。
また、プログラミングで3次元の立体を生成することもできるため、児童生徒の感覚を豊かにする効果も期待できるでしょう。

社会

社会の授業で行う地域の調査や見学活動でICTを活用すれば、効率的に情報収集を行えるようになります。自分たちで撮影した映像や写真は繰り返し確認できるため、持ち帰った情報を整理しやすくなります。

児童同士での情報交換もしやすくなることから、多様な表現方法や発信方法を身に付けることにつながるでしょう。

理科

理科の授業では、観察や実験を動画で撮影することで、より深い分析や考察を行えるようになります。また、観察や実験の考察をレポートやプレゼンテーション資料などにまとめる際は、グラフや写真を容易に挿入することが可能です。ICTを活用すれば、児童生徒1人ひとりが、考察や推論を主体的に行えるようになります。

外国語

外国語の授業でICTを活用すれば、海外の子どもたちと「本物のコミュニケーション」をとることを実現できます。オンラインで海外の同年代の児童と交流することで、多様な言語や文化に触れることも可能です。

直接会話するだけではなく、SNSやメールなどを利用すれば文章でやり取りもできるため、「聞く、読む、話す、書く」を、より体感的に習得できるようになるでしょう。

ICT教育環境整備の現状

GIGAスクール構想によるICT教育環境の整備計画は、「新型コロナウイルス感染症」の感染拡大を受けて大きく変化しました。当初の計画よりも前倒しで整備が進み、2020年から2022年にかけて急速に普及しています。

ICT機器を扱えるインターネット環境

ICT機器の利点を最大限活かすには、インターネット環境の整備が必要不可欠です。文部科学省の調査によると、2021年3月時点での整備率(平均)は78.9%であり、満足に整備されているとはいえませんでした。しかし、1年間で急速に整備が進み、2022年3月時点での整備率は94.8%に達しています。

ただし、地域によって整備率にばらつきがあり、最低値は64.2%となっています。すべての児童生徒がICT教育を受けるには、整備率を100%に引き上げる必要があるでしょう。

指導者用のデジタル教科書の整備率

指導者用デジタル教科書の整備率は、2021年3月時点で67.4%でしたが、2022年3月時点では81.4%まで改善されています。しかし、地域によっては60%程度の整備率に留まるケースが見られ、十分に整備されているとはいえません。

また、学習者用デジタル教科書の整備率に関しては、2022年3月時点で36.1%に留まります。指導者と学習者の双方がデジタル教科書を利用できる環境が整うには、まだ時間がかかると思われます。

教育用コンピューターの普及率

2021年3月時点の教育用コンピューターの普及率は、平均で1.4人/台となっています。2021年時点では地域格差が大きく、最高値は0.9人/台であるのに対し、最低値は2.9人/台となっていました。

2022年3月時点のデータを見ると、地域格差がほとんど解消され、平均値で0.9人/台まで整備が進んでいます。最低値でも1.1人/台となっており、多くの地域で1人1台以上の教育用コンピュータが整備されています。

GIGAスクール構想の推進に取り組む自治体の例

GIGAスクール構想の推進に取り組む自治体の例として、「茨城県つくば市」「埼玉県さいたま市」「東京都新宿区」について紹介します。

茨城県つくば市

茨城県つくば市では、ICT教育に関する資料がPDFで公開されており、誰でも簡単に閲覧できます。具体的には、「運用の手引き」「ICT教育活用実践事例集」「持ち帰りの手引き」「オンライン学習の手引き」といった資料が用意されています。

引用:文部科学省「自治体の事例紹介

埼玉県さいたま市

埼玉県さいたま市では、自宅でも学校でも授業が受けられる「ハイブリッド授業」を実施しています。学校がICTを活用した授業に取り組めるよう、教員専用のポータルサイトが用意されており、情報発信や実践ヒントの共有などを行えます。

引用:文部科学省「自治体の事例紹介

東京都新宿区

東京都新宿区では、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、分散登校とオンラインによる学習指導を取り入れています。ICT端末の活用方法を指導した上で、家庭への端末の持ち帰りを実施しています。

引用:文部科学省「自治体の事例紹介

GIGAスクール構想によりICT教育が推進される

GIGAスクール構想により、ICTを活用した教育が推進されています。新型コロナウイルスの感染拡大によってICT教育の環境整備が急速に進み、現在は多くの地域でICTを活用した授業や学習が行われるようになりました。

今後はデジタル機器を活用した教育が主流になっていくと考えられ、それに伴い家庭での学習スタイルも変化していくでしょう。児童生徒、教員だけではなく、子どもを持つ親もICT教育について理解し、必要があれば積極的に取り入れていくことが重要です。

インタビュー・執筆:ライター/加藤

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