コラム
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2023年で終了!ジュニアNISAをいまから始めるメリットは?廃止後はどうなる?
投資に興味のある人はもちろん、興味のない人でも一度は耳にしたことがある「ジュニアNISA」。じつは2023年12月末をもって、制度が終了してしまうことをご存じですか?
「制度が終了するならいまから始めても意味がないよね」と思った方、いえいえ、ジュニアNISAはいまが始めどき。実際に廃止が決定されてから口座を“駆け込み開設”する人が増え続けているんです。
今回は、ジュニアNISAの制度の概要といまから始めるメリットについて詳しく解説。どんな制度なのかよくわかっていないという人も、ぜひ参考にしてください。
ジュニアNISAとは?
ジュニアNISAとは、2016年よりスタートした「未成年少額投資非課税制度」のこと。その名の通り、未成年である「0歳~19歳」の子ども名義で投資専用の口座を開設し、子どもに代わって親が運用管理をおこないます。また、祖父母が孫のために口座を開設することも可能で、その場合は相続対策にもなるなど、税制面でのメリットが大きい制度となっています。
ジュニアNISAでは、年間80万円を5年間、最大400万円まで投資が可能。口座からお金を引き出せるのは18歳を過ぎてからとなっており、18歳までは口座に積み立てたお金で運用していきます。運用期間は長期であるほど利益が大きくなる可能性が高くなるため、できるだけ早いうちから始めるのがおすすめとされています。
ジュニアNISAの特徴は、「年間の投資で得た利益に対して税金がかからない」こと。
通常、運用で得た利益となる分配金や譲渡益には「20.315%」の税金が課せられてしまいますが、ジュニアNISA口座で運用すれば税金がかからないため、その分利益を多く手にすることができます。
例えば0歳から5年間で満額の400万円投資したとします。仮に18歳で引き出すとき、運用の結果450万円に増えていたとしたら、利益は50万円になりますね。
非課税の場合は50万円をまるまる利益として受け取ることができますが、もし20.315%課税されたとしたら11万5,750円が引かれてしまうので、利益はおよそ38万円に減ってしまいます。このことから、非課税枠のあるジュニアNISAはお得な制度であるといえるでしょう。
ジュニアNISA口座は子ども1人につき1口座作成できるので、子どもの人数分持っておけば税制面でのメリットはさらに大きくなりますね。
ジュニアNISAが2023年で廃止されるのはなぜ?
税制面でのメリットが受けられてお得感のある制度ですが、2020年度の税制改革をもって、2023年12月末でジュニアNISA制度の廃止が決定されました。
子どもや孫に対する教育資産の形成といった目的で導入されたジュニアNISA。非課税制度や祖父母の相続対策など、一見メリットの多い制度ですが、それ以上に大きなデメリットがあるため思うように利用者が増えなかったことが廃止の背景に挙げられます。
ジュニアNISA最大のデメリットとは、「18歳まで引き出しができない」こと。
厳密に言えば、18歳を待たずにお金を引き出すことは可能です。しかしその場合は、ジュニアNISAのメリットである“非課税”の恩恵が受けられず、さらに口座も強制的に廃止されてしまいます。それまでの利益に対してさかのぼって20.315%が課税されるので、利益率が悪化することが懸念されるでしょう。
何かと物入りな子育て世帯にとって、積み立てたお金を自由に引き出せないのは大きなリスクともいえるはず。さらに非課税枠を満額使おうとすると、5年間、毎月積み立てる金額は「月6.6万円」となかなか大きな金額になるので、現実的にこの金額を投資に回すのは難しいといった家庭が多いでしょう。この厳しい条件があったため、利用者数が伸び悩んだといわれています。
また「18歳」という年齢設定もリスクを伴う要件のひとつだと考えられます。例えば子どもが私立の高校に入学したので入学資金に使いたいと思ったら、NISA口座以外の貯蓄がない家庭では、損を覚悟で口座を解約する必要がありますよね。
このように「自由にお金を使えない」といった点が、ジュニアNISAのデメリットでした。
しかし制度が廃止されることによって、引き出し年齢の制限がなくなり使いやすくなったと話題を呼んでいます。
いまからスタートしても遅くないって本当?
結論から言えば、ジュニアNISAをいまから始めても遅くありません。年内に始めれば、「2021年12月~2023年12月」までの2年間で、最大160万円が非課税で運用することができます。
ジュニアNISA口座は「子ども1人につき1口座」作成できるので、例えば子どもが2人いる家庭であれば、あわせて「最大320万円分」が非課税で運用できるのでこれだけでも十分メリットを得られるでしょう。
制度が廃止されたあとも「継続管理勘定」という制度が設けられているので、これまでと変わらず非課税で成人まで金融商品を保有し続けることが可能。ただし、2022年の民法改正で成人年齢が18歳に引き下げられるため、2022年末までに18歳を迎える子どもはジュニアNISAの対象外となる点に注意しましょう。
もうひとつ忘れてはいけないメリットが、制度が廃止されることによって払い出し年齢に制限がなくなること。ジュニアNISAの制度が廃止される2024年1月以降は、ペナルティなくいつでもお金を引き出すことができます。
これまでのジュニアNISAのデメリットがなくなるため、非課税の恩恵を受けながら、市場の値動きや家庭の状況に合わせて好きなタイミングで資産の活用が可能になるのです。
制度廃止後のジュニアNISA口座は、2023年12月末時点での子どもの年齢によってその後の対応が異なります。
【18歳を迎えている場合】
18歳である1月1日にNISA口座が開設され、ジュニアNISAで保有している金融商品をNISA口座に移管します。一般NISAかつみたてNISAかを選択することができます。
【18歳になっていない場合】
2024年以降、それぞれ非課税期間の5年が終了となる年(2021年12月に口座を開設した場合、2026年12月)に、「継続管理勘定」に金融商品を移管し、18歳になるまで非課税で保有し続けることができます。
非課税の恩恵が受けられたり、払い出し年齢の制限がなくなったりとメリットがあるのはわかったけど、160万円という圧倒的な少額投資に良さを感じられないという人もいるかもしれません。
以下、朝日新聞出版が発行する週刊誌「AERA」の11月22日号の特集より一部引用した文章をご覧ください。
「三菱UFJ国際投信のデータ提供による試算。子どもが10歳のときにジュニアNISAを開始、年4回・20万円ずつ2年間にわたり入金した場合の結果だ。ナスダック100の投信なら、160万円が8年で828万円になっていた。」
(AERA 2021年11月22日号 15ページより引用)
「160万円しか投資できないのか……」と考える人も多いと思いますが、上記の試算では80%以上も資産が増えることになっています。
購入する金融商品によってハイリスク・ハイリターンとなるか、ローリスク・ローリターンとなるかは異なるので、必ずしも160万円が800万円以上になるとは言い切れませんが、ただ普通預金に貯蓄していくよりも夢がありますよね。せっかくのお得な制度ですから、上手に活用して効率的に資産を増やしていきたいものです。
ジュニアNISAを始めるには?
ジュニアNISAを始めるには、まず証券口座を開設しましょう。子どもの人数分、子ども名義で口座を開設することができます。「毎月(毎年)いくら投資にまわせるか?」を考えて口座を開設し、できる限り非課税枠を最大限利用するのが理想でしょう。
口座の開設手続きは金融機関の窓口やインターネットバンキング、ネット証券などで実施可能です。ジュニアNISA口座は二重開設ができないため、開設の際には税務署の確認が入ります。そのため口座の開設には最低でも1~2週間がかかる点に注意が必要です。
また、最初に決めた金融機関を変更することはできません。金融機関によって購入可能な商品の種類が異なるので、自分が購入したい金融商品がある場合、開設予定の金融機関での取り扱いがあるか、あらかじめ確認しておくことをおすすめします。
口座の開設にはマイナンバーカードや個人番号付きの住民票などが必要になるため、必要書類の準備も忘れずに。
ジュニアNISAの注意点
ここまで解説してきた内容も含め、ジュニアNISAの注意点をまとめました。
- 非課税枠は年をまたいで繰越しできない
- 最初に決めた金融機関は変更できない
- ジュニアNISAの口座開設は子ども1人につき1口座まで
- 元本割れのリスクも考えられる
- 口座の開設には最短でも1~2週間かかる
- 2023年の制度終了以降は新規買い付けができない
この中でも、「元本割れのリスク」については必ず理解した上での買い付けが必要です。教育資金を別に用意できている人はリスクをとってリターン率の良い商品を運用していくのもよいですが、貯蓄がない人にとってハイリスクな商品の運用はデメリットにすぎません。なるべく損失を抑えられるよう、自分に合った金融商品の見極めが大事です。
ジュニアNISAの発祥はイギリスの「チャイルドトラストファンド」
チャイルドトラストファンドという制度をご存じでしょうか? チャイルドトラストファンドとは、イギリス版のジュニアNISAのような制度です。
経済的な理由による教育格差をなくすために、2002年9月以降に生まれた子どもに対して、あらかじめ250ポンドを入れた口座が国から支給されていました。さらに子どもが7歳の誕生日を迎えた時点で250ポンドが支給される上、毎年1,200ポンドまで追加で積立ができるので、大きく資産を増やすことが期待できると世界各国からも注目を集めていました。ジュニアNISAと同じく非課税枠があり、18歳になるまでは引き出しができないのも大きな特徴です。
日本のジュニアNISAは、イギリスのチャイルドトラストファンドを模倣して作られた制度となっています。
チャイルドトラストファンド自体はすでに制度が廃止されていますが、その後2011年11月より「ジュニアISA」という制度が導入されており、日本のジュニアNISAと同じような仕組みで子どもの将来のための資産形成に多くの人が取り組んでいます。
イギリスのジュニアISAの特徴は、16歳以降、口座の管理を子ども本人がおこなえること。 16歳という若さで、それまで運用して得た大きな資産を引き継いで運用をおこなえるので、子どもと一緒にお金について深く考える機会が設けられそうな、魅力的な制度ですね。
2015年にはチャイルドトラストファンドからの移管(ロールオーバー)が可能になったことからもジュニアISAの保有率は年々増加傾向にあります。
日本人はまだまだ、国民のお金に関する知識が浅いといわれています。そのせいか、投資ではなく普通預金に貯蓄する人が多いのも日本人の特徴ですよね。
投資の得意なイギリス人のようにジュニアNISA制度などを上手に活用し、子どもと一緒にお金について学ぶ機会を設けられるといいですね。
いまこそジュニアNISAを始めてみては
将来の子どものための資産形成や金融リテラシーの教育など、ジュニアNISAのメリットは税制面以外にも多く挙げられます。ジュニアNISAのデメリットがなくなったといわれているいまこそ始めどきです。
少額から始められるので、これまで投資に興味がなかった人でも導入しやすいジュニアNISA。気になった人は制度が終了する前に口座を開設して、我が子のための資産運用をさっそく始めてみてはいかがでしょうか。
執筆:Webライター/夏川さほ