コラム
Column
不登校になったらと焦る前に。子どもが学校に行くのが不安そうなときの「親の声がけ」4つ
子どもが「学校に行きたくない」というとき、そこにはきっといろいろな理由があるはず。学校生活へのちょっとした不安から、「行きたくない」と感じることも多いようです。子育ての先輩たちが、学校生活での不安を解消するのに役立ったという声がけを、いくつかご紹介します。
1、教室は、間違えてもいいところ
手をあげて発言するときに、「間違えたらどうしよう……」と心配になる気持ちは、子どもはもちろん、大人でも感じるもの。でも、なかには思いつめて「学校に行きたくない」という理由になることも。
「入学式の日に教室に入ったら、黒板に書いてあったのが『教室はまちがうところだ』という詩でした」というのは、新1年生の保護者。担任の先生が子どもたちにゆっくりと読みあげてくれたという、その詩の冒頭をご紹介します。
“教室はまちがうところだ
みんなどしどし手をあげて
まちがった意見を 言おうじゃないか
まちがった答えを 言おうじゃないか”
蒔田晋治「教室はまちがうところだ」より引用
これは、小中学校の教師をつとめた蒔田晋治さんの詩。絵本にもなっているので、入学や進級を前に不安を抱いている子どもへの読み聞かせにもぴったりです。
2、友だちは、たくさんいなくて大丈夫
学校への行きしぶりがあって理由を聞いたところ、深刻そうに「だってまだ2人しか、友だちがいないから……」と、子どもが打ち明けてくれたという保護者も。そういえば“友だち100人できるかな”という歌詞が出てくる歌をうたって、新生活を楽しみにしていたのです。
慌てて「友だちは100人もいなくていいんだよ」と説明したそう。そもそも通っている学校は1学年が2クラス。同級生が100人もいないことを子どもに伝えたら、納得したそうです。そのとき「ママが子どもの頃に仲が良かった友だちは1人だったよ」「パパがいつも公園で遊んでいたともだちは、3人くらいだったかな」と話したら、安心した表情になったと教えてくれました。
もしかしたら、低学年にはよくある勘違いかもしれません。さりげなくフォローをしておくとよさそうです。
3、給食は残すより、減らして安心
小食な子どもにとっては、給食の時間に残さず食べきれるかどうかが、思いのほか大きなプレッシャーになることも。昔のように「絶対に残してはいけません」といわれることは少なくなっていますし、できれば残食をなくしたいという考えも、ゴミ問題などを考えれば意味がないわけではありません。
でも、給食が子どもにとってつらい時間になってしまっていたら、どうしたらいいのでしょうか。
子どもが学校で給食委員をしていたという保護者から聞いたのは、配膳のときにあらかじめ「少なめにしてほしい」と声をかけて、子どもが食べられる量に減らしてもらう方法。
これなら配膳のときに残っても、もっと食べたいという子どもがおかわりできるので、無駄がでにくいのだそう。
子どもでも大人でも、一人ひとり体格だって違うし、食べられる量が違うのは当たり前のこと。子どもが自分で「減らしてほしい」といいにくいときは、連絡帳などを通じて先生にフォローをお願いするのもいち案です。
4、あいさつは、心を元気にする言葉
「歴史の年号を覚えて、テストで確かめるという従来の教育とは違って、誰かのために学んだことをアウトプットするという点に、学ぶことの意味を持たせています。学習以外の目的を達成することで、子どもの記憶にも学んだことが深く残り、やる気を引き出すことができます」と遠藤先生。
通学路で交通安全の見守りをしてくれている人に、「おはようございます」とあいさつをしたり、公園で遊具を譲ってもらったときに、「ありがとう」とお礼をいったり。あいさつは大切だから、きちんといえるように教えている親がほとんどではないでしょうか。
でも、言いたいという気持ちがあっても、緊張してなかなか声が出ないということ、ありますよね。それで子どもが自信をなくしてしまったりするのは、残念なこと。
「どうしてあいさつができないの」と叱ってもダメ……そう悩んでいたある保護者は、学校で「おはようやありがとうは、心を潤す言葉です」というポスターを見て、はっとしたといいます。
あいさつができないことを責めるのではなく、親が率先してあいさつをしてみせて、「あいさつって気持ちがいいね、なんだかうれしくなるね」と子どもに声をかけるようにしたそう。
「あいさつ、しているよ」と子どもが答えてくれたのは、それからしばらくたってからのこと。いっしょに出掛けたときにようすを見ていたら、相手に聞こえるか聞こえないかというくらいの、うんと小さな声でした。でも、とても誇らしげな顔だったと教えてくれました。
「行きたくない」という気持ちを受け止めてから
あるとき急に子どもから「学校に行きたくない」といわれたら、親だって驚くでしょう。「もし、このまま不登校になったら」と動揺してしまうかもしれません。
悩みや不安を取り除いてあげたいと焦るあまり、子どもが気持ちを否定されたと感じるような言葉をかけてしまわないように、まずは深呼吸です。「行きたくないんだね」と子どもの言葉を繰り返すことで、気持ちを受け止めてから、悩みや不安を聞くようにしてみるのも、ひとつの方法です。
「学校に行かない」という選択肢の先には、どのような日々の過ごし方や、学び方があるのだろうかということを知っておくこと、考えてみることも大切です。
文部科学省では、不登校児童生徒に対して「学校に登校する」という目標を掲げるだけでなく、状況に応じてICT(情報通信技術)を活用した学習支援やフリースクールなどによって、子どもの学習の機会や進路へとつないでいくことを提案しています。
たとえば、無学年式のオンライン教材「すらら」では、ICTを活用した自宅学習を出席扱いとする文部科学省の制度にも対応しているとのこと。また、デュアルスクールといって、地方と都市の2つの学校を行き来して学習ができる「ミライの学校」などの取り組みもはじまっています。
子どもたちの未来へと続く道は、1本しかないわけではありません。これからますます、いろいろな形に広がっていくのではないでしょうか。
執筆:ライター/山見美穂子